2「どっちもダイヤのブローチだよ~」

右 ジョージアンのダイヤのブローチ、台座はシルバー、たて4.5× 横2 ㎝
左 エドワーディアンのダイヤのブローチ フランスの刻印 台座は表がプラチナ、裏はホワイトゴールド、たて2× 横4.5 ㎝
左 エドワーディアンのダイヤのブローチ フランスの刻印 台座は表がプラチナ、裏はホワイトゴールド、たて2× 横4.5 ㎝
図1右は18世紀末のジョージアンの時代に作られたものです。ダイヤはローズカットという古いダイヤのカットで、台座はシルバーです。裏はクローズド・セッティングといって、フォイルという箔(はく)を入れて閉じられています。暗闇にゆらめく松明(たいまつ)やろうそくに照らされて、美しくきらめいたことでしょう。
左は20世紀初めのエドワーディアン、エドワード王朝時代に作られたブローチです。ダイヤはブリリアンカット、台座は表がプラチナ、裏はホワイトゴールドです。
19世紀末にプラチナがジュエリーに使用されるようになり、シルバーよりすごく小さな爪でダイヤを留めるようになりました。裏はオープン・セッティングといって、宝石をセットした裏面を開けてあるので、ダイヤはより白く光るようになりました。電灯で明るくなった夜に、キラキラと輝いたことでしょう。台座のレースのような部分は、なんと! 糸のこでプラチナの板をくりぬいてあるのです。拡大レンズでぎざぎざがあるのを見ないと、信じられない話です。ミル打ちという刻みも、おそろしいほど細かいです。

図2 裏が閉じられているのと、開いているのがわかる?
貴族や王族や司祭といった、一部の人しかジュエリーをつけなかった時代です。ティアラかストマッカ―(胴衣)というドレス飾りの一部ではないかと言われました。それからドレスの形も変わり、それに合わせてジュエリーも作りかえられていったのでしょう。
5巻の天使の鏡のように本体が失われているので、つくも神は現れないでしょうが、一体どんなジュエリーだったのでしょう?
これを手に入れたのは、セピアノートという、店舗を持たずに全国のアンティークフェアを回っているお店が東京に来たときでした。

図3 ローズカットは面が三角で、
あまり光らない。
はじめはただ好きかどうか、似合うかどうかだけで選んでいたのです。
そのうち時代や国によって素材やデザイン、技法が変化していくのと、歴史や美術の知識がつながって興味が深まりました。
今ではお友達と映画や美術展に行っても「エリザベス女王のドレス、真珠がいっぱいぬいつけてあるけど、当時はすごく貴重だったんだよね~」とか「働いている主人公は小さなシルバーのブローチだけだけど、お母さんがいっぱいつけているのはヴィクトリアン時代の終わりだからだよね~」なんておしゃべりしてます。 図1左には刻印があるので、フランスでプラチナとホワイトゴールドで作られたものだとわかります。

図4 細かな細工とブリリアンカットのきらめき!
このブローチも、紗那なら「西洋アンティーク入門①相場と見極め」を開いて「100万は下らないな。エドワーディアンは高く売れる!」といいそうなお品です。さすがに100万だったら、あきらめたでしょう。でも本当にいくつもの偶然が重なって、びっくりするほど安くしてもらえたのです。
久しぶりに東京に来た母の希望で、これまた久しぶりに自由が丘にあったリガードというお店に行ったときのことでした(現在は赤坂見附)。オーナーの黒岩さんはたまたま買い付けから帰った翌日で、「いいものが安く手に入ったんですよ。」といくつか見せてくれました。その中に自分の持っているエドワーディアンのピアスにぴったりのブローチが!

図5 針の向きだと、この横長が正式。
ピアスがセットみたいにぴったりでしょ?
図1左はざっくりした素材や秋冬の厚めの服に似合います。シルクやシフォンのやわらかい素材には重すぎるけれど、ビロードのようなしっかりした布なら、お姫さまっぽい服でも大丈夫です。現代のシルバーアクセサリーでも、古びた感じなら一緒につけられます。
図1右はオールマイティでどんな服にもつけられますが、すっきりした色や素材が一番合います。たて横どちらでも使えるし、真夏に涼しげなアンティークジュエリーはあまりないので、とっても便利です。
ちなみに私の友達は、やはりリガードでもっと細長くてシンプルなブローチを買いました。相談された時には「絶対使いやすいよ~毎日でもつけられるから、高くても元がとれる!しばらくお弁当つくってがんばったけど、本当によかったと思ってる。」と自信をもってオススメしました。
この2つのダイヤのブローチ、まったくちがうけれど、どちらも私の大切な宝物です。
エドワーディアンのダイヤのブローチ
アンティークジュエリー リガード(http://www.regard-antiquejewellery.com/)
「けいこ@本大好き」 さん
FUGAのファンであり、本とおいしいものとアンティークジェリーをこよなく愛する図書館員。
FUGAのファンであり、本とおいしいものとアンティークジェリーをこよなく愛する図書館員。