1「ガラスのアクセサリーだけど割れにくい?! 〜ラリックのガラスのブローチ〜」

図1 たてに置いてます。
すごくうれしくなって、こう答えたのを覚えています。
「そうです! このブローチ、アンティークFUGAがきっかけで買いました!」
私は東京の公共図書館で子どもの本の担当をしています。「アンティークFUGA」を教えてくれたのは、職場の人たちでした。「アンティーク好きでしょ? けっこうくわしいから、おもしろいと思うよ。」
3人の担当のうち2人からオススメされたので、さっそく読んでファンになり、何人ものアンティークのお店の人に紹介しました。専門家もみな「むずかしいことまでよく調べて書いてあるね〜」と感心していました。

図2 本当はこの形が正しい。
たて3× 横4cm たてと横でちがうでしょ?。
たて3× 横4cm たてと横でちがうでしょ?。
ツバメやイチョウのモチーフとくらべると三角形で変わったデザインです。色もブルーやピンク、グリーンなどのはっきりした物が多いので、こんな色はめずらしいそうです。ラリックの本に、鋳型の写真が載っていました。1919年にデザインされ、1929年の大恐慌で景気が悪くなるまでつくられていたもののようです。そこには「FEUILLES(葉っぱ)」とあり、植物のシダをイメージしたもののようです。でも、くじゃくの羽のようだと言われたこともあります。
つや消しの地にシダの葉が浮かびあがり、その先の丸い部分はブローチを動かすとゆらゆらと発光して見えます。ガラスと台座の間にフォイルとよばれる箔(はく)がはってあるからです。もし精霊が見えたなら、ドレープをたなびかせた淡い金色のドレスを着た、女優のサラ・ベルナールみたいな美人じゃないかな〜。当時を代表するミュシャという画家が描いた絵の中でも、彼女のお芝居のポスターが好きなので、そんな想像をしました。

図3
裏です
下にラリックの刻印が見えますか?
「私にはすこし大きいけど、ちゃんと使うかしら?」「金やダイヤでもないのに、やっぱり高かったと後悔しない?」3巻に登場した加奈さんみたいに何回も通ってやっと決めました。
使いはじめると、秋冬にかかせないブローチになりました。ガラスは重くてうすい布地だとたわんでしまいます。でもこの金色はやさしく光るので、ピンクやグリーンやブルーといった明るい色でも、すこしくすんだ感じの色調なら不思議と合います。だからうすい布地につける時は、下着からすくってしっかり留めています。
実は、針の向きからいうと、ブローチの正しい位置は山の形です。(図2)でも私にはちょっと大きく感じられるので、たてにつけています。

図4
帯にゴージャスヴァージョンを広げました。
3巻でスワロウが「ラリックがあれほどあこがれた日本」と言ってますが、帯どめの代わりに着物につけてもぴったりです。
グリシーヌにはラリックの香水瓶や花瓶、グラス、ペンダントがいくつもありました。ラリックのペンダントは大きめだから、胸の下あたりでぶらぶらゆれます。ちょっと不安になって質問してみました。
ペンダントは、うっかりテーブルにぶつけたりしたら、割れませんか?」
するとオーナーの中島さんは、
「鉛を多くふくんだクリスタルガラスは透明度が高くてきれいだけど、実は割れやすい。でもラリックのほとんどのガラスのアクセサリーは鉛をおさえたセミクリスタルという、粘性…つまりねばりけの強いガラスでつくってあって割れにくいんだ。ラリックはガラスの性質をよく知っていたから、使いわけたんだろうね。」
と教えてくれました。さすがラリックですね〜。
ラリックのブローチ
ルネ・ラリック専門店ギャルリーグリシーヌ(http://www.g-glycine.com/file/shop.html)
「けいこ@本大好き」 さん
FUGAのファンであり、本とおいしいものとアンティークジェリーをこよなく愛する図書館員。
FUGAのファンであり、本とおいしいものとアンティークジェリーをこよなく愛する図書館員。